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千葉市美術館「鏑木清方と江戸の風情」(2014年9月9日~10月19日)◇しゃん日記①◇

千葉市美術館で開催中の「鏑木清方と江戸の風情」を拝見してきました。皆さまにも、ぜひご覧頂きたい展覧会でしたので、ご紹介致します。
本展は、一介の挿絵画家であった清方が、どのようにして本画制作の道へ進み、独自の美人画を確立し、日本画の巨匠となっていったのか?という過程を、丁寧な作品解説と豊富な資料も交えて、読み解いていくことのできる展示構成となっております。

展示自体もコンパクトで分かりやすく、見ごたえ十分という嬉しい内容でした。清方をあまりご存知ない方への入門編としても、清方マニア(!)な方へもお勧めできます。

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鏑木清方(かぶらききよかた)は本名を鏑木健一といい、明治11年(1878)に東京神田佐久間町で生まれました。

13歳で浮世絵師・月岡芳年の弟子である水野年方に師事し、父・條野採菊が創刊した『やまと新聞』で、挿絵画家としてキャリアをスタートさせました。
展示は「序章 清方を育てた絵・清方が学んだ絵」から始まります。師である水野年方や、デビュー当時の清方が身近に触れていたであろう渡辺省亭や武内桂舟、富岡永洗、梶田半古などが描いた木版多色摺の本からは、当時の挿絵業界の流行が分かります。

続いて「一章 清方の画業をたどる-江戸へのまなざしから-」。

若き清方が、同門の画友たちと互いの腕を競い合った様子が肉筆回覧誌から見て取れ、勝川春章や喜多川歌麿の作品を模写したものからは、浮世絵に描かれた美人への関心の萌芽を感じました。江戸の浮世絵師たちが、受け継いできた「姿」や「型」を貪欲に学び、自らの作品制作へと反映させていったことが分かります。

とりわけ鈴木春信からは、スラリとした容姿と、幼さの残る顔立ちが生み出す“危うい色香”を、自身の美人画へ取り込んでいったように思われます。

その後しだいに活躍の場は、挿絵という紙媒体から展覧会という大型の本画作品へと移り、文展で入賞・受賞を重ねる実力派へと成長。日本画の大家としての地位と人気を不動のものとし、江戸時代初期の風俗や絵画への関心も強めていきました。
会場では、涼しげな目元とわずかに開いた唇の“清方美人”がズラリと展示され、眼福にあずかることができます。

後半は「二章 清方と江戸をめぐる三題」という切り口で展開されます。

関東大震災や、太平洋戦争によって、清方が生まれ育った下町の景観は一変しますが、彼はそれに真っ向から対峙するかのように、失われた“江戸の風情が残る明治”を理想郷として回顧する作品を描き始めます。今展のラストを飾る《朝夕安居》昭和23年(1948)では、明治という時代に残る江戸風情と、何気ない庶民の暮らしぶりが、軽やかな筆使いで丁寧に描写されており、70歳を超えた清方の、画境の極みを観ることができます。

 

華麗な美人画を間近で堪能できるのはもちろんのこと、「人間・鏑木清方」の生き様を知ることができる興味深い展覧会となっていますので、ぜひ足を運んで頂きたいと思います。(中千尋)

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