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山種美術館「クールな男とおしゃれな女 ―絵の中のよそおい」(2014年5月17日~7月13日)◇しゃん日記◇

山種美術館(渋谷区広尾)で「クールな男とおしゃれな女 ―絵の中のよそおい」を拝見してきました。江戸絵画や浮世絵に登場する粋な風姿から、近現代の日本画や洋画に描かれたモダンな装いまで、各時代の男女の着こなしをテーマにしたユニークな展覧会です。和装洋装とりまぜたお洒落なスタイリングが目白押し。時代の流行を取り入れた美意識が鮮やかに集います。

菊池契月の繊細な筆で描かれた《紀貫之》の装束からは平安の雅が感じられ、安田靫彦が描く織田信長《出陣の舞》の片身替りの小袖からは、戦国武将のファッションセンスが見て取れます。また、東洲斎写楽《八代目森田勘弥の駕篭舁鴬の次郎作》では、黒光りする雲母摺(きらずり)の中で、次郎作(じろさく)が束ね熨斗文を染め抜いた袖無羽織に貝模様の東からげで見得を切り、実に豪快です。

《夕立》 池田輝方

上の作品、池田輝方の《夕立》には、神社の境内で雨宿りする若い男女の群像が描かれ、江戸好みの粋な着こなしを観ることができます。右隻中央をご覧下さい。袂を軽く口にくわえて、雨に濡れた着物の裾を絞る島田髷の女の姿があります。夏の着物地からは腕が透けて見え、浅葱色(あさぎいろ)の蹴出しが清涼感を与えています。素足に履いた右近下駄の鼻緒と、絡げた腰紐を緑の同系色にしているのもおしゃれのポイントです。
池田輝方(1883-1921)は木挽町(現在の東京都中央区)生まれの美人画家です。水野年方に入門し、鏑木清方や鰭崎英朋らと共に、江戸文化と浮世絵の伝統を踏まえた新しい風俗画を目指しました。榊原蕉園(のちの池田蕉園)の夫でもあります。

洋装の作品の中で、とりわけ私のお気に入りは、伊東深水(1898-1972)の《婦人像》です。モデルは木暮実千代。妖艶な容姿と巧みな演技力で人気を馳せた女優です。金屏風を背景に、白い帽子と赤い手袋、胸元の大きく開いた赤い花柄のワンピースという装いで、頬に軽く指先をあてるしぐさが、上品さの中にコケティッシュな雰囲気を醸しています。大きな白襟は、より一層華やかさを演出し、人物が黒い漆のテーブルへ映り込む描写が何とも心憎いです。イヤリングと揃いのネックレスは、金とグレーのシンプルな配色がモダンです。(余談ですが、木暮実千代さんの『祇園囃子』(監督:溝口健二)の美代春役の着こなしも私は大好きです。着物姿の彼女からは、みずみずしい色香が漂っています。)
この作品を実際にご覧頂きますと、オーダーメイドで作られた額縁が、画中の配色と見事に呼応していることに気づいて頂けると思います。額縁は、黒い漆の直線的なラインを生かしつつ金箔で仕上げ、マット部分にはイヤリングと同じ色合いのグレーを使用しています。掛軸の表装や額縁は、画集等では省略されてしまうことが多いので、展覧会へ足を運ばれた方だけのお楽しみ、ともいえましょう。

山種美術館の1Fにあるカフェでは、展覧会の出品作品をイメージして作られた上生菓子(青山「菊屋」謹製)が頂けます。開放的なガラス越しに外の景色を眺めつつ、鑑賞の余韻を目と舌で楽しめます。会期中に着物でお越しの方は、団体割引料金(一般:800円、大高生:700円)にて入館することができ、さらに嬉しいプチギフトもありますので、夏の着物へ衣替えするこの季節に、ぜひお出かけしてみて下さいね。
(中千尋)

 

山種美術館_チラシ_クールな男とおしゃれな女

山種美術館「クールな男とおしゃれな女―絵の中のよそおい」

<会期>2014年5月17日(土)〜7月13日(日)
(会期中一部展示替え有/前期:5/17〜6/15、後期6/17〜7/13)
午前10時〜午後5時(入館は4時30分まで)

<休館日>月曜日

<入館料>一般1,000円(800円) 大高生800円(700円)
中学生以下無料
※( )内は20名以上の団体料金および前売料金
※障がい者手帳・被爆者手帳をご提示の方、およびその介助者(1名)は無料
※きもの割引:会期中着物でご来館のお客様は団体割引料金にて入館可能(プチギフトあり)

<会場>山種美術館(東京都渋谷区広尾3-12-36)
TEL: 03-5777-8600(ハローダイヤル)
http://www.yamatane-museum.jp

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