美人画礼賛

《舞仕度》上村松園|これであなたもお扇子美人!

お扇子は万能アイテム

夏の暑い盛りはもちろん、冬の季節の屋内でも、温度調節とおしゃれを兼ねてお扇子があると便利です。茶扇子は一本で結界を表現し、礼装用の末広を訪問着や附下のときに帯に挿せば、相手に対して敬意を表すことができます。また、小紋や紬のときなどは、小粋な小道具として使えます。
「扇子を帯に挿す」という所作を美しく行って「扇子美人」になれる簡単な方法をご紹介しますので、最後までおつきあい下さいね。

《舞仕度》上村松園

今回の作品は、上村松園の《舞仕度》です。“おさらい会”の一場面とする説もあります。裕福な家の座敷を舞台に女性4人が登場し、それぞれに個性ある装いを見せています。
左に描かれている「高島田を結った振袖のお嬢さま」は、今まさに扇を帯に挿そうと(あるいは抜こうと)していて、舞を披露する仕度をしているところ。すみれ色の振袖には菊模様が配され、立て矢(矢の字)に結んだ橙色の帯は丸紋尽。着物が五つ紋であることも格調の高さを感じさせます。
扇を扱う彼女のしぐさにご注目下さい。ヒジは張らず、脇の下に余計な空間を作らないようにしつつも、肩を上げていません。いわゆる「なで肩」の状態のまま扇を扱うことで、女性らしい優しさが表現されています。

 

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ファッションチェック「ご婦人方のおしゃれな装い」

緋毛氈の上に座る女性たちの姿も拝見していきましょう。鼓を扱う女性は、革にそっと息を吹きかけ、音の調整をしています。丸髷を結っていることから既婚者であることが分かりますね。金茶色の着物の裾には唐松模様。全体的に落ち着いた雰囲気のコーディネイトですが、紺色の帯締めが挿し色になっています。鼓の胴には、ススキと鈴虫の蒔絵が施され、さぞ良い音がすることでしょう。ちょっと珍しい紫の調べ緒が上品でシックですね。

後ろ姿の高島田の女性は、縹色(はなだいろ)の振袖。持ち扇子をわずかに広げ、右奥の女性と談笑中。市松模様を配した袂や裾には白い萩の花がこぼれ、お太鼓に結んだ帯には、ダイナミックな筆捌きで竹が描かれています。クールな印象の着こなしの中にも、簪や帯締めの朱色、襦袢に配された紅色が、さりげなく若さを演出。鼈甲(べっこう)の後ろ挿しも華やかさを添えています。

右端の丸髷の女性は、口元に袖をあてて何かを囁いているよう。3人の中で最も地味な装いですが、栗茶色の着物の縞は、実は一目絞り。半襟には青海波の模様、帯は茄子紺色。普段着の雰囲気を持ちつつも、胸に紋を確認することができますので、やはりこの場のメンバーにふさわしいと言えましょう。

さてさて、お待たせいたしました。「扇子美人」になれるワザを以下でご紹介させて頂きます。①~④の所作をスムーズに行うだけで、美人度がアップ。ぜひ挑戦してみてくださいね。

 

「扇子美人」になる方法

扇子の各部名称

①扇子をさす帯の位置(自分の左胸の下あたり)を左手で見当をつける
②左手の親指を使って、帯と帯の間に隙間をあける
③右手で扇子の天(てん)の近くを持ち、緘尻(とじり)から帯の隙間へすべりこませる
④扇子が帯からのぞく分量を調整する(2cmくらい)

ヒジと肩を上げずに一連の所作を行うと、優雅に見えるのがポイント!帯板が邪魔をして帯と帯の間に扇子を挿しづらい場合は、一巻き目の帯と帯揚げの間に挿すなど工夫してみてください。扇子が大きい場合は、斜めに挿し込みましょう。何度か練習すれば、指先の感覚だけで素早くできるようになります。扇子を帯から抜く場合は、番号の順序を逆に行えばOK。「扇子美人」への道はすぐそこ。
(中千尋)
 

【作品解説】

“おさらい会”の一場面とする説もある。この作品を描くために、上村松園は祇園の舞妓をモデルに使って何度もスケッチしたという。画中では高島田の令嬢姿で描かれている。やや緊張の面持ちで舞仕度をするお嬢さまと、緋毛氈の上でなごやかな表情をうかべる女性たちとの対比が面白い。登場人物それぞれの着物・髪型の描き分けや、屏風・畳・毛氈を利用した空間構成など、人間模様を表現するための様々な仕掛けがうかがえる。

【作家略歴】

上村松園(うえむら しょうえん)1875~1949(明治8年~昭和24年)
京都市下京区生まれ。本名津禰(つね)。父親は松園が誕生する直前に他界した為、母仲子によって女手一つで育てられる。京都府画学校へ入学(明治20年)、同年四条派の鈴木松年の画塾へ入門。明治26年から幸野楳嶺に師事、楳嶺が死去した為、明治28年から竹内栖鳳に師事。様々な流派の技法を身につけ、独自の美人画表現を極めた。1948年(昭和23年)女性として初めて文化勲章を受章。昭和24年74歳で死去。

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